香港での子育て医療事情

昨今グローバル化が進み、海外駐在員として海外で働いたり海外で活躍する方が多くなっています。それに伴って、夫の海外赴任に帯同して日本人駐在妻となる女性も増えています。海外生活をする中で子どもを授かり、海外で出産を経験する女性も今後多くなっていくことが予想されます。今回の記事では、香港で暮らす日本人女性が妊娠、出産を経験される上で気になる、妊娠発覚から出産までの流れ、出産後の子どもの予防接種、香港での子育て事情についてご紹介します。

香港で暮らす女性の妊娠~出産までの流れとは?

香港で妊娠した場合、まずどこの病院で出産するかを決めます。香港には公立病院と私立病院があり、それぞれ10ずつの合わせて20施設出産ができる病院があります。私立病院を利用するか公立病院を利用するかによって、産前健診場所やサービス、対応が変わってきます。それぞれどのような流れで、妊娠から出産までサポートしてくれるのでしょうか。 私立病院での出産 私立病院での出産をする場合、自分で選んだドクターに自分で選んだ産院に来てもらうというシステムになっています。また、出産方法も選択が可能で、帝王切開の麻酔師も事前に予約をしておくことができます。産前健診は自分が選んだドクターのクリニックで受け、費用は毎回約500~1000香港ドルかかります。私立病院は予約がとりやすく、診察で待たされることはほとんどありません。産む際には予め予約した病院にドクターが来院して、スタンバイしてくれます。私立病院での入院は毎食好きなメニューを選ぶことができ、面会者にもルームサービスが入ります。個室の場合にはシャワーやトイレまでついているため、何も持たずに入院しても困らない、高級ホテルのようなサービスを受けることができます。一般的に普通分娩の場合は2泊3日、帝王切開の場合は4泊5日のプランとなっており、費用として支払うのは部屋代、ドクター代、麻酔を使う場合は麻酔師代とすべてにお金がかかります。私立病院によって差はありますが、平均して5~10万香港ドル(日本円で78万~160万円)ほどかかります。私立病院での出産は、お金をだしただけ比例して綺麗で、質の高いサービスを受けることができ、利便性も高くなります。 公立病院での出産 公立病院で出産をする場合、産前検診は住んでいる地区の婦人科クリニックで行い、32週目から産院にいくという流れが一般的です。香港市民や香港在住の外国人に取得義務がある香港IDを持っていれば、産前健診は無料で受診することができます。産前健診はクリニックが開院してから早い人順に診断を受けることができますが、緊急患者が来た場合はそちらが優先され、平均約1~2時間ほど待たされることが多くなっています。公立病院では、産前健診時の尿検査はマイカップを準備する必要があり、血圧は自分で測って申告しなければならないため、注意が必要です。また、公立病院の婦人科病棟には備え付けのものがないため、産前、産後に必要となるものは事前に準備しておく必要があります。公立病院での出産は、予め準備しなければならないことやルールなどがあり、地区のクリニック、産院の情報を収集しておく必要がありますが、費用が非常に小額で、退院時の支払いは宿泊費の約150香港ドル(日本円で約2,300円)のみとなっており、地元の方を中心に公立病院での出産が多くなっています。ただ、私立病院のように日本語通訳サービスや日本人通訳がいないため、言葉の面で日本人駐在妻にとっては懸念点になります。

香港での出産後の子ども予防接種

香港で出産した場合、乳児予防接種は日本に帰国せず、必要な予防接種は香港で受けることができます。その予防接種はどのようなスケジュールになっているのでしょうか? 出産後、「児童健康記録帳」と「免疫注射記録」を取得しよう 香港で産まれた乳幼児には、香港政府の医療機関から「児童健康記録帳」という日本の母子手帳のようなものを申請、取得することができます。予防接種に関しては、母嬰健康院(MCH Centre:Mother Child Health Centre)という香港の特別行政区衛生署にある部署で、「免疫注射記録」という予防接種の記録簿を申請、取得することが可能です。この2つの記録手帳によって、子どもの健康、予防接種を管理します。 香港で生まれた乳児の予防接種スケジュール 生まれたその日中・・・B型肝炎(Hepatitis B Vaccine 1) 生まれて一週間以内・・・BCG(結核)、ポリオ1型(Polio Type I) 1ヶ月・・・B型肝炎(Hepatitis B Vaccine 2) 2~4ヶ月・・・3種混合:DPTジフテリア(Diphtheria)、百日咳(Pertussis)、破傷風(Tetanus)1回目、ポリオ3型(Polio Type III) 1回目 3~5ヶ月・・・3種混合:DPT(同上)2回目 4~6ヶ月・・・3種混合:DPT(同上)3回目、ポリオ3型(Polio Type III) 2回目 6ヶ月・・・B型肝炎(Hepatitis B Vaccine 3) 1歳・・・MMR:おたふく風邪(Measles)、はしか(Mumps)、風疹(Rubella) 1歳6ヶ月・・・3種混合:DPT(同上)、ポリオ((Polio Type Booster Dose) これらの予防接種後は、小学校に入学してから、学校主導で百日咳、ポリオ、MMRの予防接種をうけることができます。海外では、入学入園時に決められた予防接種や接種証明書が必要な場合がありますが、香港では必要ありません。ただ、香港ではこれ以外に季節性インフルエンザ予防やA型肝炎、水痘などの予防接種を推奨しているため、ご家族で接種を検討する必要があるでしょう。

香港には日本人女性の妊娠から出産、そして子育てしやすい環境が整っている

香港での妊娠から出産までの流れをご説明してきましたが、言葉の壁のある香港での出産、子育てはそう簡単なことではありません。以下では、香港で暮らす日本人妻の妊娠~子育てをサポートできる制度や病院についてご紹介します。 日本語のマタニティクラスを開催している病院 香港に住む日本人の妊婦達を応援するため、香港で唯一の日本語によるマタニティクラスを開催しているクリニックが、「DYM health care」です。出産におけるサポートや同じ日本人妻たちとの情報交換などもすることができます。海外での出産に不安を持っている日本人駐在員妻も多いと思うので、こういった制度があると安心してマタニティ生活を送ることができます。また、小児予防接種も充実しているため、出産後も安心して利用できる病院としておススメといえます。 子育て主婦の味方!ヘルパー制度とは 香港では日本とは異なり、各家庭で家政婦、メイド、アマさん、お手伝いさんなどと呼ばれるヘルパーを雇って身の回りの生活をサポートしてもらうのが一般的となっています。ヘルパーとして働く人々は外国人労働者が多く、そのほとんどはフィリピン人です。香港のヘルパーには、子どもの世話から家事までお願いすることができ、住み込みで対応してもらいます。2015年時点で、香港政府が定めている外国人ヘルパーの最低賃金は月に約6万5千円となっており、安価でヘルパーを雇うことができます。このヘルパー制度を活用することで、子育てのサポートを受けられるのはもちろん、駐在員妻も仕事をすることができるという利点があります。

まとめ

香港で出産する場合には、私立病院と公立病院のどちらで出産するかによって、産前健診場所やサービス、対応が大きく変わってきます。私立病院の場合は、ドクターや出産方法に関して自分で選択することができ、かつ高級ホテルに宿泊するような質の高いサービスを受けることができます。ただ、費用が高額なので、出産ができる私立病院を調べて料金比較やサービス内容を熟慮した上で、選択するのが良いでしょう。公立病院の場合は、私立病院と違って小額で受診ができます。そのため、多くの香港在住の妊婦が来院し、待ち時間が長くなるのがデメリットといえます。出産後は、日本と同様の必要な予防接種が香港でも受けることができます。乳児予防接種のスケジュール以外には、とくに義務化されている予防接種はありませんが、季節性インフルエンザやA型肝炎など香港でかかりやすい病気の予防接種はしておくほうがよいでしょう。香港には、DYM health careのような日本人の出産をサポートする病院や、ヘルパー制度などの子育てしやすい環境を整える制度が充実しています。ですので、日本人駐在妻にとって香港は、安心して妊娠から子育てまですることができる国といえます。